電力自由化骨抜きに…前代未聞の不正に揺れる業界 トップ人事も混迷

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
新電力が持つ顧客情報を不正閲覧していた問題について記者会見で謝罪する関西電力の森望社長(右)=大阪市北区で2023年1月31日、井口彩撮影
新電力が持つ顧客情報を不正閲覧していた問題について記者会見で謝罪する関西電力の森望社長(右)=大阪市北区で2023年1月31日、井口彩撮影

 電力業界が前代未聞の不祥事に揺れている。電力自由化を骨抜きにするような問題が次々と発覚し、電力大手10社でつくる業界の総本山「電気事業連合会」のトップ人事にも混乱が波及している。

関電が発端 顧客情報の不正閲覧

 「公正な競争を揺るがすものと大変重く受け止めている。深くおわび申し上げる」。2022年12月に発覚した顧客情報の不正閲覧問題を受け、関西電力の森望社長は1月31日の記者会見の冒頭、こう述べて深々と頭を下げた。

 関電の1月末までの社内調査では、22年4~12月の約9カ月間で、関電の営業担当社員ら1013人が子会社「関西電力送配電」のシステムにアクセスし、電力小売り事業に新規参入した電力会社「新電力」と契約する一般家庭の顧客情報計4万806件分を不正に閲覧していた。具体的には契約者の氏名や電話番号、契約先、電力使用量など7項目で、本来は知りようがない情報だ。

 不正閲覧をした社員のうち、少なくとも30人は「不正に得た情報を営業活動に利用する目的だった」と回答。悪質な不正が社内で常態化していたことが明らかになった。関電は過去3年間に対象期間を延ばして調査を続ける方針で、不正規模が拡大するのは確実だ。

 電力市場を監督する経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会(電取委)は事態を重く見て、1月24、25日に関電と関電送配電に立ち入り検査に入った。立ち入り検査は15年の設立以来初めてのことだ。

電力自由化、骨抜きに

 監督官庁が憤っているのは、この不祥事が電力自由化の根幹を揺るがす問題だったからだ。

この記事は有料記事です。

残り2488文字(全文3142文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月