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SNS投稿をマネタイズするプラットフォーム「Swaypay」は、インフルエンサーマーケティングをどう変えていくのか

購入品をTikTokに投稿するだけで、フォロワー数に関わらずキャッシュバックが得られる。

そんな新しい仕組みを提供しているのが「Swaypay」だ。

"Why We Invested: Swaypay"より

これまでフォロワー数の多いトップインフルエンサーにギフティングやPR投稿の依頼をすることで成り立ってきたインフルエンサーマーケティングだが、Swaypayをはじめとするマイクロインフルエンサーを活用するサービスの登場によって、次のフェーズへと突入しつつある。

TikTokへ投稿すれば誰もがキャッシュバックを得られる「Swaypay」

Swaypayの最大の特徴は、フォロワー数に関わらずあらゆる人がキャッシュバックの対象となる点だ。

対象ユーザーの条件は、アメリカ在住で14歳以上であること、TikTokのアカウントに加え、VenmoかPaypalのアカウントを持っていることのみで、フォロワー数の制限はない。

たとえ数十人しかフォロワーがいなくても、Swaypay登録ブランドの商品を購入し、その商品をTikTokで紹介すれば、商品代金の5%~100%のキャッシュバックを得ることができる。

Swaypayを利用してTioTokへ投稿したユーザーは、1投稿あたり15ドルほど獲得しているとSwaypayは公表している。

利用方法もいたってシンプル。

Swaypayアプリをダウンロードし、登録されているブランドの商品を購入後、TikTokへ投稿する。投稿のリンクをSwaypayアプリに登録すれば、パフォーマンスにあわせてキャッシュバックが入る仕組みだ。

投稿はSwaypayによってパフォーマンスが評価され、その評価によってキャッシュバックの割合が変動する。評価はフォロワー数ではなく、Likeやコメント数などのエンゲージメントを中心に評価しているという。

また、キャッシュバックの対象となるには以下の要件を満たす必要がある。

・クリエイティブな投稿であること
・Swaypay登録ブランドの製品を紹介していること
・Tiktokのガイドラインを遵守していること
・ブランドをタグ付けしていること
・製品の紹介がメインの投稿であること(商品が一定時間以上映っていること)
・1投稿あたり1ブランドのみの紹介であること(他のブランドと一緒に紹介していないこと)
・ブランドに対してネガティブな投稿でないこと

Swaypayがこれらの要件を満たしていることを確認し、さらにエンゲージメントを中心とした評価を行うことで、ブランド側はコストをかけずにインフルエンサーマーケティングを行うことができる。

下記はSwaypayを通してキャッシュバックを得ているTikTokerの投稿例だ。

@collinjb_

There’s always that one 💅 #fyp #comedy #collinjb #champion #swaypay @champion @swaypay backup account @collinjbsus

♬ original sound - Collin

このTikTokerは、70ドルで買ったChampionのスウェットを着用してTikTokに投稿したことで、250ドルのキャッシュバックを得たという

アパレル以外にも、マクドナルドやダンキンドーナツといったファストフードチェーンもSwaypayを活用し、TikTokerの投稿を促進している。

1人のトップインフルエンサーより、1000人のマイクロインフルエンサー

これまでインフルエンサーマーケティングといえば、多くのフォロワーを持つインフルエンサーへのPR投稿の依頼が中心だった。

誰もがSNSアカウントを持つようになったことでインフルエンサーの影響力も増大し、2018年には50億ドルだったインフルエンサーマーケティング市場は2021年には140億ドルまで成長した

一方で、SNSではフォロワー数の多いメガインフルエンサーよりも、フォロワー数の少ないマイクロインフルエンサーの方がエンゲージメント率は高くなる。

フォロワー数100万であればLikeやコメントといったエンゲージメントが発生する率は平均して1%程度だが、10万程度のインフルエンサーであればエンゲージメント率は平均5%となる。

さらにフォロワー数の少ないマイクロインフルエンサーであれば、それ以上のエンゲージメント率が期待できる。

SNSにおいて、フォロワー数がそのままインプレッション数に直結するわけではない。特に最近はどのプラットフォームもエンゲージメント率に重きをおいたアルゴリズム設計となっており、たとえフォローしていても一定期間リアクションをしていないユーザーの投稿は表示される可能性が下がっていく。

そのため、同じ予算を使うのであればフォロワーが100万人以上いるトップインフルエンサー1人につぎ込むよりも、フォロワー1万〜10万程度のマイクロインフルエンサー1,000人を採用する方が、費用対効果がいいケースが増えている。

Rex Woodburyは、インフルエンサーマーケティングの変化について書いた「The Evolution of the Influencer」のなかで、100万ドルの予算をキム・カーダシアン一人に使った場合と、1,000人のマイクロインフルエンサーに使った場合のCPM(インプレッション単価)を比較している。

彼の試算によれば、キム・カーダシアンのCPMは0.67ドル、マイクロインフルエンサー1,000人のCPMは0.20ドルと、3倍もの開きがあった。

つまり、マイクロインフルエンサー1,000人の投稿は、キム・カーダシアンの投稿に比べて、インプレッションを獲得するためのコストが1/3で済むということである。

また、企業がインフルエンサーマーケティングに力をいれる背景には、広告のCPMが年々上がっていることも影響している。

今後インプレッションを効率的に増やすためには、エンゲージメントの高いマイクロインフルエンサーの投稿を増やすことがますます重要となっていくだろう。

こうしたマイクロインフルエンサーへの需要の高まりが、キャッシュバックの仕組みによってUGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)を促進するプラットフォームであるSwaypayへの期待を高めている。

インフルエンサーマーケティングの未来

Swaypayの調査によれば、Swaypayを利用した企業はコンバージョン率が13%上昇し、CPMは広告に比べて1/10まで下がったという

CPMの減少のみならずコンバージョン率が上がった背景には、対象となる投稿の条件として「ユーザーが実際に購入したもの」であることが影響していると考えられる。

これまでのインフルエンサーマーケティングでは、インフルエンサー自身は購入することなく、企業からプレゼントされた商品の商品が主流だった。

しかしSwaypayを通した投稿はすべてユーザーが定価で購入したものであり、商品のコストパフォーマンスも含めて評価し、おすすめしたいものを投稿する。よって投稿の信頼性が高く、コンバージョンにつながりやすいと考えられる。

また、Swaypayはエンゲージメントや投稿を通して売れた金額にあわせてキャッシュバックしているため、初期投資が少なくて済むためD2Cをはじめとする小規模事業者もインフルエンサーマーケティングに取り組みやすいというメリットもある。

アメリカでは、Swaypay以外にもBountyKaleなど、SNSの投稿によってキャッシュバックを行うプラットフォームが次々と生まれている。

これらのサービスは、今後インフルエンサーマーケティングを大きく変化させ、D2Cをはじめとする小規模ブランドの新たなプレイブックとなるかもしれない。

(Photo: Swaypay Official Page


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