山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

なぜ「ダサい服」が売られ続けるのか?

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目次

買った人が不幸になる服?

少し前ですが、ツイッターのタイムラインにこんなツイートが流れてきました。

このツイートに対するリプライで、様々なアイテムが槍玉に挙げられています。 

 

 僕個人としては「その人が着たい服を着るのが一番のオシャレ」だと思っているので、どういう服であれ、本人が着たいと思って着ているなら、他人がどうこう言うべきではないという考えです。

とはいえ、このツイートのリプライがこれほど盛況なのは、共感する人がそれだけ多いということでしょう。

 

10年前に流行した服が今も人気セレクトショップで売られている

で、こうやって挙げられたアイテムを見て僕が感じたのは懐かしさ。ここに挙げられているのはだいたい10〜15年前に流行ったアイテムなんです。

僕は2008年から2015年まで、ファッション企画会社で働いていました。主な業務内容はクライアントである服をつくる会社や服を売る会社に、どういう服が売れるのかを提案すること。ファッションにそれほど積極的ではないマス層に向けた低価格帯の商品を扱っているクライアントが多かったのですが、当時クライアントの商品の中で売れ筋だったのが、上掲のようなアイテムなのです。

例えば、最初のツイートで挙げられていた、裾裏チェック柄パンツ。

これは、10年ちょっと前に流行していたデザインです。例えばこちらは2009年のビームス原宿店のショーウィンドウですが、がっつり裾裏チェック柄パンツが提案されています。

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ビームスのフラッグシップストアと言える原宿店のショーウィンドウを飾っていたということは、2009年当時裾裏チェック柄パンツはファッションに積極的なイノベーター層や、それに準ずるフォロワー層に向けたデザインだったことがわかると思います。

書籍「結局、男の服は普通がいい」でも詳しくご紹介しているのですが、こういったチェック柄やストライプ柄などを取り入れた「トラッドっぽいごちゃついたデザインの服」は、2006年にトム・ブラウンというデザイナーズブランドが大ブレイクをしてから急速に拡大し、2010年頃にはある程度マス層にも浸透していたはずです。

先日、久し振りに訪れたアウトレットのビームスで、裾裏チェック柄パンツと同じような「トラッドっぽいごちゃついたデザインの服」が売られていたことに驚きました。

こういった商品はたいてアウトレット専売品です。アウトレット専売品とは、ファッションに積極的なビームスの店頭に売られていたものの売れ残りではなく、ファッションにそれほど積極的ではないマス層に向けてつくられた商品です。

また、ビームスのアウトレットだけでなく、しまむらのようなマス層に向けた低価格商品を扱うお店では、今も同じような商品を見つけることができます。

 

売れるからつくる

お店で継続して売っているということは、売れているということでしょう。つまり、「トラッドっぽいごちゃついたデザインの服」はこの10年間ずっと売れ続けているということ。と、言うことは、商品としてはとても優秀な服と言えるでしょう。

例えば、上掲のこちらのようなニットは、僕がファッション企画会社で担当していたメーカーさんでは鉄板の売れ行きを誇る人気商品でした。

ここで最初にご紹介したツイートを今一度見てみましょう。

 「法律で作るの禁止にしてほしい」というのはまぁ半分以上冗談でしょうが、その冗談にマジレスすると「売れるとわかっている商品をつくらない訳がない」という答えになります。その服が世間的にどういう評価を受けているかなんて、まず問題になりません。売れるからつくる。商売なので当たり前の話です。

 

マス層を惹き付ける力があるデザインの秘密

ちなみに、 アウトレットのビームスの商品を見て、僕はこういうことを考えました。

「マス層を惹き付ける力があるデザイン」については、まだまだ考察の途中ですが、「オシャレ=着飾らなければならない」「オシャレ=普通とは違った服」などという意識が強く影響しているのではないかなーと、ぼんやり思っています。

追記:続編となる記事を公開しています。

www.yamadakoji.com

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