男女雇用機会均等法の第一世代も定年を迎え、「定年女子」が増えています。今の仕事を辞めた後も続く人生。自分らしく生きるためには、どう考え、何を準備すればいいのか。ロールモデルが少ない中で、定年を見据えて準備を進めた人や、定年後も生き生きと活躍する人に体験談を聞きました。

 40歳で夫と死別し、大手総合建設会社に入社した南幸惠さん(73歳)。50歳から心理学やキャリア関連の資格を取ったことから、メンタルヘルスや人材育成の研修講師を任され社内で評判に。部署異動の希望がかない、全国支店の従業員向け研修へと仕事の幅が広がりました。定年退職後は、主に働く人のカウンセリングや研修を行う事業で起業し、年収は会社員時代の2~3倍に。73歳になった今も現役で活躍しています。「定年前に独立することも考えた」という南さんが、定年まで勤め上げてよかったこととは?

夫との突然の別れ。「新しい人生を歩く」と気持ちを切り替えた

編集部(以下、略) 40歳で再就職する前は、専業主婦だったそうですね。仕事復帰の経緯を教えてください。

南幸惠さん(以下、南) 夫が単身赴任中に心筋梗塞で突然亡くなったのです。当時夫は瀬戸大橋の架橋工事に携わっていて、亡くなる3日前は横浜の自宅で元気に過ごしていました。「また2週間後にね」と駅で別れてそれっきり。葬儀の後で、夫の会社の人から「うちで働きませんか?」と声をかけていただき、残された3人の子を育てるために働き始めました。

南幸惠さん M’sライフデザイン代表
南幸惠さん M’sライフデザイン代表
1950年生まれ。40歳で大手総合建設会社に入社。50歳から産業カウンセラー、キャリアコンサルタントなど30種類の資格を取得し、メンタルヘルスケアの社員研修を行うようになる。その後、人事部所属となり、全社の従業員向け研修を担当。定年退職後、独立起業し現職。59歳で法政大学大学院キャリアデザイン学研究科に入学、61歳で修了。クオリア アソシエイト講師、ジャパンリスクソリューション登録コンサルタントなど

―― 突然の別れは心労も大きかったことでしょう。

 今思えば、前を向くためにそういう思考になっていたのかもしれませんが、悲しみやショックを感じるよりも前に「これだったのか」と思ったんですよね。

 というのも、私は23歳で結婚退職してから、料理やお花などの習い事に打ち込み、よき妻、よき母として家族を支えながら、趣味を極めるという生き方に憧れていました。専業主婦の暮らしに満足していた私が、夫が亡くなる数カ月前から、夕方になると「私の人生これでいいのかな」と思うようになって……。夫が亡くなったとき、子どもたちは中学生と小学生。30歳だったら(子どもが小さくて)働けなかったかもしれない。50歳だったら会社から声をかけてもらえなかったかもしれない。「神様が私にもう一つ人生をくれたのかな」「これから新しい人生を歩くんだ」というふうに自然と気持ちの切り替えができました。

―― 17年ぶりの仕事復帰はスムーズでしたか?