スーダン800人超死亡 「ダルフール危機」再来か 民族浄化の恐れ
アフリカ北東部スーダンで国軍と衝突する準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」などによる民間人への攻撃が過激化している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は10日、西部ダルフールで黒人系住民の800人以上が殺害されたと報告した。「民族浄化」の様相で、多くの難民が隣国チャドへと逃げている。
「状況は最悪だ。RSFに親族10人が殺された」。チャドに避難するスーダン人難民の女性は8日、朝日新聞の取材にそう語った。UNHCRなどの調査では、4月半ばの戦闘開始後、約620万人が国内外に逃れた。チャドには約45万人が避難している。
民間人の被害が特に激しいのがダルフールだ。AP通信によると、アラブ系を中心とするRSFは過去数週間で攻勢を強め、西ダルフールの軍事拠点を占拠。その直後に、黒人系住民に対する大規模な虐殺が始まったとみられる。欧州連合のボレル外交安全保障上級代表は12日に「国際社会はダルフールのできごとに目をつぶり、新たなジェノサイド(集団殺害)が起きることを許してはいけない」とする声明を出した。
UNHCRによると、襲撃を受けたのは西ダルフールのアルダマタで、周辺から避難者が集まる国内避難民キャンプがある。100近い避難所が破壊され、性暴力や拷問の報告も相次いでいる。10日までの1週間で少なくとも約8千人がチャドに逃れたという。
この地域では20年前に「ダルフール危機」が起き、約30万人が死亡した。UNHCRのフィリッポ・グランディ高等弁務官は声明で「20年前、世界はダルフールでのひどい残虐行為と人権侵害に衝撃を受けた。我々は、同じような動きが展開されることを恐れている」と訴えた。(今泉奏)
- 【視点】
2005年にスーダン(当時南スーダンはまだ独立していませんでした)の首都ハルツームに滞在していた時、NGOを訪問した政府関係者が「我々スーダンはアラブとアフリカの懸け橋として」と力説していたことがあります。地理的にスーダンは、地中海世界とア
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