SF(すこし・ふしぎ)映画の最高峰「ドロステのはてで僕ら」をきみは見たか? 大絶賛の5つの理由を全力で解説(1/3 ページ)

映画「ドロステのはてで僕ら」は、全編ほぼワンカット・リアルタイム進行の映画の最高傑作であり、この世で一番面白い70分間だった。

» 2020年07月19日 11時30分 公開
[ヒナタカねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 現在、「ドロステのはてで僕ら」という日本映画が小規模で公開されている。初めに断言しておこう、本作は全編ほぼワンカット・リアルタイム進行の映画の最高傑作であり、小さな範囲のSF映画の最高傑作であり、この世で一番面白い70分間(上映時間)であったと!


小さな範囲のSF映画の最高傑作「ドロステのはてで僕ら」をきみは見たか?大絶賛の5つの理由を全力で解説する! (C)ヨーロッパ企画/トリウッド2020

予告編

 しかも本作は、ともすれば難しくなりがちなSFギミックを扱っていながら、子どもから大人まで見る人を選ばない、「誰が見ても超面白い!」と思える内容でもあった。事実、7月現在、本作はFilmarksでは5点満点中4.1点映画.comでは5点満点中4.3点といった高評価をマークしている。

 タイトルにあるドロステとは、「同じイメージが再帰的に繰り返される視覚効果」を意味している。どのようにそのドロステの効果があらわれるのか……は劇中で丁寧な解説もされるのでぜひ見ていただきたい。詳しくは後述するが、それを含めたアイデアを実現する作り手の努力にも、「これを撮るのは大変なんてもんじゃなかったに違いない!」と驚愕すると共に、「この人たちすごすぎるだろ!」と称賛したくなるはずだ。

 そして、本作はなるべく予備知識がないまま見たほうがいい。劇中ではサプライズに次ぐサプライズの嵐、そのアイデアの豊かさとフレッシュさにも、大きな感動がある映画だったからだ。ぜひネタバレを踏む前に劇場へ駆け付けてほしい。

 以下からは、より深く作品の魅力を記していこう。もちろんネタバレのない範囲で書いたつもりであるが、前述した通り本作はなるべく予備知識がないまま見たほうがいい内容である。にじみ出てくる程度の軽微なネタバレは含まれることを、ご容赦いただきたい。


1:全編ほぼワンカット・リアルタイム進行の意義

 本作の物語は、カフェオーナーの男のカトウが、モニターから“2分後の自分”が話しかけくる様を目の当たりにすることから始まる。どうやら、カトウのいる雑居ビルの2階の部屋と、1階のカフェが、2分の時差でつながっているらしいのだ。そこからは、カフェの女性店員や常連客を巻き込んで、この“タイムテレビ”を有効活用していく方法を考えていくことになる。


小さな範囲のSF映画の最高傑作「ドロステのはてで僕ら」をきみは見たか?大絶賛の5つの理由を全力で解説する! (C)ヨーロッパ企画/トリウッド2020

 驚愕すべきは、その長回しの撮影だ。序盤で1回だけ暗転するシーンがあるのだが、それ以外は“切れ目”のないシームレスな映像が続いていく。つまり、全編がほぼワンカットの映像となっている。実際は撮影時にいくつかカットをかけ、編集で切れ目のないように見せている“疑似ワンカット”なのだが、本編を見れば丸々1時間以上をずっとカットなしで撮っているようにしか見えない。

 その全編ほぼワンカットという手法は、物語およびギミックとも密接に絡んでいる。2分後を映すタイムテレビの映像と全く同じことが、劇中の時間における2分後に、ピッタリと時間が重なるように“再現”されるのだから。この奇妙な感覚、面白さは、カットを割ってしまっては得られないものだ。

 1階のカフェと2階の部屋を行き来する、浮遊感のある映像はそれだけでも見ていて面白い。カメラマンも兼任した山口淳太監督は、同じくほぼ全編疑似ワンカットの映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のような“没入感”のあるカメラワークも意識していたのだそうだ。観客は登場人物たちと一緒に、この不可思議な現象を“体験”している感覚も覚えるだろう。



2:本気ですごい“秒単位のつじつま合わせ”

 前述した疑似ワンカットの映像は、もちろん簡単にできることではない。少しでもトラブルがあれば(実際はいくつかのカットでの区切りがあるとはいえ)最初から撮り直しになる、というのはもちろんだが、本作では加えて“2分後の未来”へのつじつま合わせをしないといけないという、とんでもなく高いハードルを乗り越えなければならないのだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/31/news026.jpg 【今日の計算】「1+2−3+4」を計算せよ
  2. /nl/articles/2405/31/news017.jpg 沖縄の川で異常繁殖した外来種の捕獲作戦を決行 大量の外来種と意外な魚の存在に「大きさにびっくり」「日本は大丈夫か!?」と150万再生
  3. /nl/articles/2405/31/news186.jpg 有名ハリウッド俳優の“天使過ぎる”美形息子の現在が話題 『GANTZ』作者「立派な女性に成長していて……」
  4. /nl/articles/2405/31/news174.jpg 光上せあら、子の“公園水道遊び”が「迷惑行為」と批判も…… 語気荒げ猛反論「子供は国で育てる!」「これが日本に必要な姿なんだよ!」
  5. /nl/articles/2406/01/news031.jpg “高2女子”がメンズカットしたら…… 驚きの大変身に「似合いすぎ」「なんやねんこの完璧さ」と反響
  6. /nl/articles/2406/01/news010.jpg 本当に同じ物件なの!? 築54年のアパートを魔改造→“まさかの姿”に激変 「カッコよい!」「普通に住みたい」
  7. /nl/articles/2405/31/news115.jpg 絶対目立つな! 浜崎あゆみ、“超高級外車”で子どもの授業参観へ ブランドで固めた強オーラに「お母さん可愛すぎ」「大パニック起きます」
  8. /nl/articles/2405/31/news172.jpg とにかく明るい安村、今度はアメリカで大ウケ オーディション番組で喝采を浴びる「この男を好きにならずにいられない」
  9. /nl/articles/2406/01/news027.jpg 4カ月赤ちゃん、寝る前におしゃぶりを差し出すと…… ママを見つめる天使の笑顔にとろけてしまった「もうすぐ羽根が生える頃かなぁ」
  10. /nl/articles/2405/31/news138.jpg 「絶対、逆写真詐欺だろ!」 コメダ、新作サンド「具沢山」名乗り戦々恐々 「ボリュームすごそうで怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「これを見つけたら緊急事態」 農家が恐れる“生えると危険な雑草”の繁殖力に「悪いやつだったんですね」「よく食べてました」
  2. 「虎に翼」、ヒロインの弟役が初登場 演じた人物のギャップに驚き「同一人物なのか?」「朝ドラにも出るの凄いな」
  3. 【今日の計算】「9−9×9+9」を計算せよ
  4. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  5. YUKI、大胆なスリット入った近影に驚きの声 「52歳なの意味わからんな」「ここまで変わらないって本当凄い」
  6. 誰にも懐かないボス犬を、1歳娘が散歩へ連れて行くと…… 従えて歩く驚きの光景に「あの狂犬が…」「凄い…凄すぎる」
  7. 晩酌中、ふと机の下をのぞいたら…… 背筋が凍える光景に反響続々「皆様は覗かないようにしてくださいね」
  8. 小林麻耶&國光吟、600万円超する“新型外国車”購入に「中古で売る時の値段は考えてません」 高額iPadもゲットで生活フルエンジョイ
  9. 真田広之の俳優息子、母・手塚理美と“超大物司会者”に対面 最新ショットに「ご立派な息子さん」「似てる雰囲気」
  10. 「トップバリュを甘く見てた」 ジョブチューンで審査員大絶賛の“マストバイ商品5選”に反響 「買ってみよ」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  2. 「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”
  3. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 同情せざるを得ない衝撃の光景に「私でも笑ってしまう」「こんなん見たら仕事できない」
  4. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  7. 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は…… 斜め上のキュートな活用術に「超ナイスアイデア」「こういうの大好きだ!」
  8. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  9. JR東のネット銀行「JRE BANK」、申し込み殺到でメール遅延、初日分の申込受付を終了
  10. サーティワンが“よくばりフェス”の「カップの品切れ」謝罪…… 連日大人気で「予想を大幅に上回る販売」