父親は画鬼、娘の生きる道は 澤田瞳子さん直木賞候補作

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上原佳久
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 幕末明治に活躍した絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)(1831~89)は奇抜な着想と奔放な筆遣いで「画鬼」と称された。直木賞候補となっている、作家澤田瞳子さんの歴史時代小説『星落ちて、なお』(文芸春秋)は、そんな奇才を父に持ち、画業を継ぐことを運命づけられた娘の物語。導きの星が流れ落ちた後、一人の女性が自らの生きる道を思い定めるまでを描く。

 暁斎は狩野派の流れをくみ、大和絵から浮世絵まで、時にユーモアあふれる絵筆を縦横に振るった。

 「(想像上の)手長足長も福禄寿も、さも見てきたように描けてしまう。日本史上一番うまいのではと思うくらい好きな絵師です」

 ただ、天才の画業自体は伊藤若冲を取り上げた『若冲』(2015年)で既に書いている。「歴史小説はどうしても有名人ばかりになりがち。今回は天才の死後に残された人々が、それぞれの人生を懸命に生きた姿を描きたかった」

 物語は明治の半ば、暁斎の葬儀の場面で始まる。幼い頃から絵の手ほどきを受けてきた娘の「とよ」は、河鍋暁翠(きょうすい)として22歳で一門を継ぐことに。病弱な妹を抱えながら、父の画風を守りたい一心で筆を執るが、次第に時代の風にさらされるようになり……。

 とよにとって、暁斎は〈越え…

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