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仮想オフィスの現実解?「ちょっと相談」や「緊急集合」をしやすい富士ソフトの「FAM Office」

Dell 「ニューノーマルとアバター ~ビジネスを止めないAR/VR」より

富士ソフト「FAM Office」

 テレワークの推進に伴い、何かと問題や課題が増えている。

 読者の中にもパッといくつか浮かぶ人もいるハズだし、弊誌でもテレワーク顛末記的な記事も多い。一定規模以上の企業でのテレワーク事情は、人数が多いのもあり、システム面からの改修や手探りで進めている傾向にあり、コミュニケーションの機会損失にともなう生産性の低下がとくに課題となっている。ちょっとした雑談や向かいの席にいる仕事仲間に軽い相談が難しい点が顕著で、TeamsやSlackなどを導入した以降に感じている人が多いのではないだろうか。

 Dell Technologiesが開催した産業向けVRセミナー「ニューノーマルとアバター ~ビジネスを止めないAR/VR」内において、富士ソフトが使用する社内ツール「FAM Office」の導入から得られた効果までを解説した。同ツールは上記したコミュニケーションの機能不全を補うものだ。

「オフィスを仮想化する」の現実解?

「FAM Office」にログインしている人はアバターで表示されるため、社内のだれがオフィスにいるか分かる

 「FAM Office」はオフィスを俯瞰で見たようなデザインだ。チームごとにブロックがあり、ログインすると所定の場所にその人のアバターが表示される。これにより共有する作業空間にいることがわかる仕組みだ。また、コメントのポップアップ機能もあり、そのときの悩み事のほか、シビアな作業中で話しかけて欲しくないといった意志表示ができる。

 アバターは本人の写真と簡易な人型モデルで構成され、PCスペックへの依存度はどう見ても低い類いだ。オフィス向けPCは、下手をするとZoomやTeamsなどのビデオ会議にギリギリ耐えているくらいのスペックが多く、急な需要への対応としては簡素なビジュアルは正解だろう。

簡単な意志表示機能もあり、スクリーンショットは永瀬さんが相談に行っている状態ところ

 音声通話機能も搭載しており、アバターを話したい人に対して接触させると、自動的に音声通話がスタートする。セッションでは「アバターをぶつける」と表現していた。この点はシンプルな操作になるが、富士ソフトは「ちょっと話しかけるときのきっかけ」としてほどよい反応を得ているそうだ。また会議室機能もあり、これもアバターを会議室になっているエリアに移動させるだけとなっている。

会議室使用中の様子。PCは好きなビジュアルを選べるようだ

「ちょっとした相談」や「緊急集合」がしやすい環境に

 富士ソフトは2020年6月に、社内アンケートを実施した。設問のひとつに「在宅勤務を行う上で、PC・ネットーワク以外の環境面で生産性や作業品質に影響している問題はありますか?」があり、下記するスクリーンショットのように円滑なコミュニケーションに問題を感じる社員が多く、とくに担当職の人の反応が顕著だったという。

 分析の結果、雑談や上司・同僚・部下とのコミュニケーション減少が大きく生産性に影響しており、物理的なオフィスでのコミュニケーション分布の一角が欠落している状態だと判断。ITツールは揃っているにも関わらず、社内断絶状態が生じていたという。

 テレワーク主体、もしくは6〜7割のテレワーク状況になると組織の形成が難しく、人間関係や仲間意識が薄れ、コミュニケーションを取らなくなり、最終的に生産性の低下へと至るという分析だ。組織内におけるコミュニケーションの重要性ついてはいくつかの実験が過去に実施されているが、わかりやすいものでホーソン実験があり、同セッションでも事例として挙げられていた。

2020年6月に実施した社内アンケート結果
コミュニケーション機能不全による影響図

 「FAM Office」の効果は物理オフィス内での会話数に近い結果とのこと。気軽な相談や声かけが効率的になった点が大きく、社員からの反応もよいという。「FAM Office」の解説を担当した富士ソフト プロダクト事業本文moreNOTE事業部永瀬佳代子氏は「ちょっとした相談(顔を見ながら)」「社内の状況が俯瞰して見渡せる」「緊急集合」のやりやすさが気に入っていると語った。

「FAM Office」で可能になった要素例

 とりわけ顔を見る重要性について痛感した読者もいるだろう。この点はその人の性質もあるが、顔なりアバターなりがあったほうがスムーズであるケースが多い。筆者の場合だと、とくに相手の顔は見えなくてもいいのだが、やはりクライアントのほとんどはカメラをオンにしてくれという場合がほとんどだ(ただ、そのときは実写ではなく、表情などを反映できるネコなどのアバターで問題はなく、人と話している情報が欲しいと思われる。極端にいえば、音声入力に対してそれっぽくアバターが動いてさえいればよいようで、布団の上でゴロゴロしながら会議に参加していることが多い)。

 「FAM Office」の仕様を見るに、ちょっと話しかけたいときのやりやすさが分かりやすい。もちろん、物理的なオフィスに近しいフィールになるように開発されているのもあるが、特定の人にスイっと話しかけられる機能は、市販のビジネスツールにも少ない。社内ツールらしい最適化ともいえ、永瀬氏は、オフィス空間の「一緒にいる感じ」を表現できたとセッションをまとめた。